滋賀県米原市で、代々受け継がれてきた大工の技術を大切にしながら、家づくりに取り組む仲谷建設。現在は息子さんが中心となって事業を引き継ぎ、先代から受け継いだ技術と新しい時代の家づくりをつないでいます。
長年、家業を支えてきた博子さんに、建設業とともに歩んできた日々、ご家族への思い、そしてこれからの仲谷建設についてお話を伺いました。

代々受け継がれてきた大工の仕事
仲谷建設の歩みは、先代から続く大工の仕事にさかのぼります。かつては木材を一本一本加工する「刻み」の作業を行い、職人たちが手をかけながら家を建ててきました。
博子さんが嫁いでこられた頃も、建築の仕事は今より活気があり、職人さんたちとともに家づくりに取り組む日々。ご主人もお父さまの仕事を支えながら、経験を積み重ねてこられました。
博子さん自身も、経理や事務などを担い、家業を陰から支えてきたお一人です。
自営業だからこそ、いつも気がかりだったのは「来年も仕事があるだろうか」ということ。会社勤めとは違い、仕事の見通しが立たない不安はあったといいます。それでも、紹介や人とのつながりを大切にしながら、一つひとつの仕事を積み重ねてきました。
家族で力を合わせ、長い年月をかけて築いてきた信頼。それが仲谷建設の土台となっています。

家族の背中を見て育まれた、職人としての技術
現在、仕事の中心を担うのは息子さんです。お父さまが大工として働く姿を間近で見ながら育ち、建築の専門学校を経て、外で約5年間の修業を積まれました。
そして、現場で身につけた技術を生かし、家業を継ぐ道を自ら選ばれました。
その技術の中でも、ひときわ大切にしているのが、木材を手作業で加工する「刻み」です。現在は、工場で木材をあらかじめ加工するプレカット工法が広く普及しています。一方、手刻みには、木材の状態や現場の状況に応じて柔軟に対応できる強みがあります。長年の経験と技術があってこそできる仕事です。
息子さんも、自らの手で木材を刻み、自宅を建てられました。今では貴重になりつつある手仕事の技術を、実践を通じて受け継いでいるのです。ご主人から息子さんへ。言葉で細かく教え込むというよりも、仕事に向き合う姿を見せ、背中で伝えてきたものがあるのかもしれません。博子さんは、息子さんがご主人と同じ方向を目指して仕事を続けていることを、うれしく感じておられます。

自然の力を生かした、心地よい住まいづくり
仲谷建設がこれから力を入れていきたいと考えているのが、自然素材や自然の力を生かした家づくりです。
その一つが「パッシブデザイン」という考え方。風の通り道や窓の配置、太陽の光の入り方、軒の出などを工夫し、自然の力を上手に取り入れることで、できるだけ快適に過ごせる住まいを目指します。たとえば、夏の日差しを軒で遮り、風が通り抜けるように設計すること。こうした工夫は、昔ながらの日本建築にも見られる知恵です。便利な設備だけに頼るのではなく、土地や周囲の環境、建物のつくりを考えながら、住まいそのものの工夫で快適さを生み出していく。先人たちが培ってきた知恵と、現代の住まいに求められる省エネルギーの考え方がつながっています。
新築だけでなく、リフォームにも対応する仲谷建設。水まわりの改修から住まい全体に関わる工事まで、地域の暮らしを支える仕事を続けています。
特に、昔ながらの日本建築や木の特性を理解した職人の技術は、既存の建物を生かすリフォームでも大切な力になります。

地域とのつながりを大切に。博子さんの変わらぬ行動力
仲谷建設を支えてきた博子さんは、日々の暮らしを楽しみながら、仕事の面でも大切な役割を担っています。
チラシやカレンダーを自分で手配りし、地域の方々のもとへ足を運ぶことも、そのひとつ。直接顔を合わせて言葉を交わす中で、そこから新たなお仕事につながることもあるそうです。
一軒一軒を訪ね、顔の見えるお付き合いを続けること。そうした地道な積み重ねが、地域との信頼関係を育み、仲谷建設の仕事を支えてきたのかもしれません。
ご主人とともに歩んできた年月の中で築かれた人とのつながりを大切にしながら、今も自分にできることを続ける博子さん。家族を支え、地域との縁をつなぐ姿からは、長年培ってきた行動力と温かい人柄が感じられます。

ご主人とともに歩んだ日々、そして次の世代へ
長年、二人三脚で家業を支えてきた博子さん。仕事のことはもちろん、家族の暮らしも含めて、建設業とともに歩んできました。
ご主人は、周囲から見ても穏やかで優しい人柄だったそうです。仕事に真摯に向き合いながら、家族を大切にする姿。その人柄もまた、今の仲谷建設につながる大切な財産です。
ご主人が亡くなられた後、事業は息子さんへと引き継がれました。長く一緒に仕事をしてきたからこそ、寂しさやさまざまな思いがある一方で、博子さんは今、息子さんの考えや進め方を尊重し、必要なときに支えるという立場で見守っています。
これまで担ってきた経理の仕事も、できる限り続けていくつもりだといいます。
家族経営ならではの難しさもありますが、長年培ってきた経験を生かしながら、次の世代が自分たちらしい仕事を築いていけるように。博子さんの思いは、今も仲谷建設の未来を支えています。

地域の住まいを守り、これからも一棟一棟丁寧に
新築住宅を取り巻く環境は、建築費や住宅ローンの負担など、以前とは大きく変わってきています。そんな時代だからこそ、住まいを新しく建てることだけでなく、今ある家を生かし、長く住み続けられるように整えることも大切です。
仲谷建設が大切にしているのは、代々受け継いできた大工の技術と、ご主人から息子さんへとつながる家づくりへの思い。
自然の力を生かした住まいづくり、そして手仕事の経験を生かしたリフォーム。これまで培ってきた技術を大切にしながら、これからも地域の住まいと暮らしに向き合っていきます。
家族で受け継いできた技術と信頼を、次の時代へ。仲谷建設の歩みは、これからも続いていきます。

自分の時間も大切に。博子さんらしく、いきいきと過ごす毎日
ご主人を見送り、暮らしが変わった博子さん。長年、夫婦で一緒に過ごしてきたからこそ、寂しさはもちろんあります。それでも今は、家で一人、好きな時間に好きなことをして過ごせる気楽さも感じているそうです。
「何時にお風呂に入っても、何時に寝ても、何時に起きてもいい。自分のペースで過ごせるのがいいですね」
そんなふうに、肩の力を抜いて自分の時間を楽しむ博子さん。一方で、ご主人への思いが薄れたわけではありません。毎朝晩、お仏壇に手を合わせ、おつとめをすることは今も欠かさない日課です。日々の暮らしの中に、ご主人を思い、語りかける時間が自然と息づいています。
ご主人とは、これまでいろいろな場所へ旅行にも出かけてきました。一緒に見た景色や旅先での思い出は、今も大切な宝物です。そして、これからはご主人と一緒には行けなかった場所にも足を運び、さまざまな旅を楽しみたいと考えているそう。近所の友人たちとのお出かけも、楽しみのひとつになっています。
さらに、博子さんの最近の楽しみには、お孫さんと一緒にバレーボールに関わる時間です。お孫さんがバレーボールを始めたことをきっかけに、送迎がてら自分も練習に顔を出すようになったのだとか。世代を超えて同じことを楽しめるのは、うれしいこと。周りの人とのつながりを楽しみながら、体を動かすことにも前向きです。
ご主人との思い出を胸に、自分らしい暮らしを楽しみ、家族や友人との時間も大切にする博子さん。その姿からは、これからの日々をいきいきと歩んでいこうとする、しなやかな強さが感じられます。
