筆ペンで絵のように字をかく「己書」(おのれしょ)の師範として、米原市上野を中心に「己書 水蘭道場」で己書を教えている水蘭先生にお話しを伺いました。
己書は、楽しんで書くことをモットーにした筆ペンを用いる書道です。趣味として習うだけではなく、その独特な書体が多くの注目を集め、近年では飲食店の看板やメニュー表にも採用されています。水蘭先生はその己書の幸座を定期的に開催し、文字を書く楽しさを伝えています。
道場を始めたきっかけ
小さいころから書道を習い、字を書く事が好きだった水蘭先生。専門学校を卒業後は全く違う仕事についておられましたが、知人の方がきっかけで「己書」(おのれしょ)という書の流派を知ったそうです。「働き始めてからペンを持つ機会も減り、字を書くのは走り書きばかりという生活でしたが、体験会では字を書くことがとにかく楽しいと思えました」
軽い気持ちで参加されたそうですが、字を書くに魅了され幸座を受けるうちに師範の資格を取得。その後、己書の“道場”を始め、現在では多くの生徒を教える先生として活動されています。
己書の魅力
水蘭先生は己書の魅力は、文字に集中することで得られるリラックス効果だと考えています。「己書で文字を書く間は、目の前の文字に集中するので心の中が無になるような感覚を得ます。普段から焦っているようだったり調子が悪かったりする場合は、その日の心の状態や性格が字に現れるようにも思います」
また、己書では先生が書いた「お題」を参考にしつつ、書き方のコツを教わりながら自分なりの書き方を探求します。水蘭先生は「先生のお題が正解ではなく、自分なりの表現を見つける自由さも己書の魅力です」と話します。「己書には失敗という概念はなく、現在の自分を表現しながら向き合うことを大切にしています。私は師範という立場で受講者の方に教えていますが、今でも生徒さんの作品から新たな気づきを得ることがあります」
己書を通じて広がる輪
受講生の方には以前絵手紙や書道を習っていた方も多いほか、今まで飽きやすくて習い事が続かなかった方も多く通い続けているといいます。「決まりごとが少なく、自分で自由に続けられることが、続けていただける理由になっているのでは」と水蘭先生は話します。
水蘭先生が定期的に開催する幸座は、地元の方のコミュニティにもなっているそうです。「初対面の方でも、幸座を受けることで自然と仲良くなっていかれます。幸座一回ごとに都度申し込む形が、気兼ねなく参加しやすいのも影響していると思います」
また、己書を教える資格である“師範”の育成にも取組んでおられます。
「前職のころから、仕事中は“一緒に働く人にいかに上手に伝えるか”に気を配っており、人を育てる事に興味がありました。今、自分の関心に近い仕事ができて、とてもうれしいです」
己書で気づけた「絵を描く楽しさ」
己書では文字を書くだけではなく、簡単なイラストを添えた作品も制作します。お地蔵さんや龍、野菜や童話の登場人物などのイラストを文字と一緒で書く事で、小さなアートを自分で作る事ができます。
イラストを描くといっても難しいものではなく、初心者でも幸座を通じて誰でもイラストを描けるようになるそうです。水蘭先生も幼い頃は絵を描くのが苦手で、己書でイラストを描くことに不安を感じていたといいます。「“絵を描く事はできない”と思っていたのですが、今では楽しみながら描けるようになりました。絵を描くことは生きる中で絶対に必要ではない事ですが、今自分で描けるようになって誰かにプレゼントできるようになると人生が楽しくなると今では思っています」
趣味はインテリア
お忙しい水蘭先生ですが、最近の趣味はインテリアだそうです。「己書の道場を始めてから、家で作業をする時間が増え、自然とインテリアに興味を持つようになりました」。
実はファッションの専門学校を卒業したという水蘭先生、少しずつ好みの家具を集めたり、YouTubeなどの動画を活用しながら学び続けているそうです。「インテリアの勉強を通して、ファッションやメイクとのつながりも感じるようになり、とても興味深く感じています」
筆ペンで手軽に、自由に心のまま書く“己書”、自分の心と向き合いながら文字や絵を書く楽しみを体験してみませんか?己書幸座に興味がある方は、ぜひ公式ホームページからお問い合わせください。