虹鱒を中心にした料理で、多くの人を魅了する「おたべ」。そのお店を切り盛りしているのが、森 希久美さんです。子どもの頃から家業のお手伝いをしていた森さんですが、一度は地元を離れ、県外で生活していました。しかし、さまざまな出来事を経て再び地元に戻り、家業を引き継ぐことになりました。その背景には、地元の味を守りたいという強い思いがありました。
虹鱒の美味しさを伝えたい!『おたべ』を受け継いだ理由
「おたべ」を継いだきっかけは、森さん自身が「美味しい虹鱒を守り、伝えたい」と思ったことでした。お母様が体調を崩されたこともあり、育児と仕事の両立が可能な地元での生活を選びました。「虹鱒って、鮭とは全然違うんです。歯ごたえがしっかりしていて、一晩寝かせるとさらに旨味が増すんですよ」と、森さんはその美味しさを熱心に語ります。
また、お店の仕事には幼い頃から関わりがありました。当時は、みんなが遊んでいる中でお手伝いをすることに不満を感じていたそうです。しかし、大人になり「この味を次の世代に残したい」と考えるようになったと言います。
地元の食材で心を込めた料理を提供
「おたべ」の人気メニューは「虹鱒の欲ばり親子丼」(2,500円)。虹鱒の刺身やいくら、甘露煮、あら汁が一度に楽しめる贅沢なメニューです。森さんが特に大切にしているのは、地元の食材を活かした料理です。お店で使用するご飯はすべて無農薬・無肥料で自家栽培したお米を使用、ピザ生地は米粉で手作りしています。また、調味料にもこだわり、地元・米原市醒井の「醤油屋喜代治商店」のヤマキ醤油、味噌を使用しています。この醤油は、食材の美味しさを最大限に引き立てる名脇役として欠かせない存在です。
お酒にもこだわりがあり、周辺では取り扱いのない銘柄を酒蔵から直接仕入れています。月に一度開催する日本酒の呑み比べ会は、様々な地酒が楽しめ、ここでしか味わえない特別な銘柄が揃っています。
自家栽培のお米で作る日本酒への想い
森さんが新たに挑戦しているのは、自家で栽培したお米を使ったお酒作りです。再来年には完成を目指し、アルコールなどの混ぜ物を一切加えない、純粋でお米の旨味が感じられる日本酒を造る予定です。地元の米原市は美味しい水に恵まれており、その自然の恵みを最大限活かした酒造りが進行中です。
また、日本酒は味わいの変化も楽しめると語る森さん。「アルコールアレルギーのある人でも、お米100%のお酒なら飲めた」というエピソードもあり、多くの人に日本酒の魅力を届けたいという強い思いがあります。
ものづくりが元気の源
森さんは「ものづくりが好き」と語ります。エプロンや携帯カバーを手作りすることで、日々の気分転換を楽しんでいるそうです。「自分で手を動かして何かを生み出すのが楽しい」と話すその表情は、生き生きと輝いていました。
「おたべ」は、ここでしか味わえない地元の味わいと魅力が詰まった特別な場所です。森さんが手間ひまをかけて作り上げた料理やお酒を味わえば、米原市の豊かな自然や伝統を五感で楽しむことができます。ぜひ「おたべ」を訪れて、地元愛あふれるおもてなしと心に残るひとときをお楽しみください。